子供の歌 「おはよう、ママ」ができるまで
目 次
| 1オンリーワンの仕事をしたい
| 2多言語の歌の現状 | 3歌詞をどのように考えたか | | 4日本語、英語、ロシア語を選んだ理由 | 5インターネットで作曲を募集 | 6ホームページの上位表示 | | 7ピアノ奏者と歌手を探す | 8CDの制作 | 9小学校での実験 |
- オンリーワンの仕事をしたい
私は、71歳(2005年)のおじいさんで技術系の人間です。私の技術者としての信条として独創性や日本や世界に一つしかないオンリーワンを尊敬します。65歳くらいの時、何か独創的な、オンリーワン的な仕事をしてみたいと思っていました。
もう年ですので新しいことを学んで独創的な仕事をすることは難しいので、自分の過去の経験を生かして仕事をしようと考えました。
私は、外資系の会社に勤めていたとき、1970年2月世界一周をしましたがフランスとイタリヤで英語が通じなくて困ったことがあり、帰国後フランス語、イタリヤ語、スペイン語を独習しました。会社に勤める前の大学時代に英語、ドイツ語、ロシア語を学んでいましたので、私には多言語の経験があります。いろいろな国の言語を学びますと、いろいろな国の文化に興味を覚え、それぞれの国に優れた文化があることが分かり、尊敬の念を抱くようになりました。そしてたくさんの国に行き楽しい思い出ができ幸せでした。
私は、この多言語の経験を生かして独創的な仕事をしたいと思案しました。多言語は国際的な広がりがあります。多言語に触れることで国際交流の役に立ち、また他国の文化に興味を持つ動機にもつながることが期待できます。それが子供が楽しい思いをしながらできる仕事にしたいと思いました。
多言語を覚えることは国際的な感覚にも接することになり、これから国際交流が盛んになりますので何かに役に立つと思いました。2ないし3ヶ国語を覚えると子供の自信にもなるとも思います。いろいろ考えた末、子供が多言語を経験するには歌がよいのではないかと考えました。その歌は覚えやすく、楽しく、かつ今までにない特徴を持った歌にしたいと思いました。
- 多言語の歌の現状
私と同じ目的で作られた歌がありましたら私が歌を作る必要がありません。多言語の歌を作るのに先立って、現在どのような子供の多言語の歌があるかを調べました。インターネットで多言語と歌、 ”multiple languages”と song をキーワードにして検索エンジンを使って調べました。多言語の歌はかなりたくさんありました。多くは各国の有名な子供の歌を多言語に翻訳したものでした。内容が豊富で系統的に学習する必要がある、いわゆる語学の教材として優れたものもありました。私の目的は、容易に覚えられて国際交流に役に立ち、子供たちがいろいろな国の文化に興味を持つ動機付けをすることです。私のような目的で作られた多言語の歌が見当たりませんでしたので制作してみようと考えました。
- 歌詞をどのように考えたか
多言語の歌ですので、世界の子供たちが歌える歌にしたい、そして覚えやすく楽しい歌にしたいと思いました。
日本には子供の歌として優れた童謡、唱歌、わらべ歌がありますが、一般に歌詞の持つ感情は、世界の子供たちに歌ってもらう場合、気候、風土、歴史などが異なりますと同じ言葉でもその言葉に対する感情は異なりますので同じ感情を必ずしも共有できるとは限りません。歌詞は通常、1番、2番、3番などとあり、それぞれ叙情的な言葉が使われ、歌詞がそれぞれ異なります。詩的な言葉は、言葉としては難しく、多言語を覚えるのにかなりの練習が必要で子供にとっては楽しいことにはなりません。それで言葉は易しい基本的な日常語を使うことを考えました。日常語は、文化が違ってもその言葉にたいしてはほぼ同じ感情を持ちます。またすぐに日常生活で使えます。日常のコミュニケーションで大事なのは挨拶です。特に今の子供は挨拶が苦手と聞いていましたので、挨拶語を使うことを考えました。
朝のお母さんとの挨拶が一番大事と考え、出だしの歌詞を「おはよう、ママ」にしました。
挨拶言葉に、おはよう、こんにちわ、さようなら、おやすみなさいなどがありますが、これらをどのように組み合わせるかが難しい問題でした。また、挨拶言葉だけでは、つまらない内容になりますので、最終的にはママ、友達を想定し、かつテンポのよい言葉を入れて明るくしようとしました。言葉の基本として「はい」という言葉は大事に思いましたので、ママへの返事に「はい、ママ」と入れました。
明るく楽しい雰囲気を出すためママと一緒にいるのが楽しいことを自ら言ってもらうために「あなたとわたし たのしいな」としました。「あなたとわたし」になっていますが、「わたしとあなた」ではないことも子供に感じて欲しいと思いました。歌の調子をよくするため次に「1,2,3、」を入れました。他の国の言葉では、数をどのように数えるかを知るためでもあります。
次に友達の名前の代表として「たろうちゃん」を呼んで最も大切な言葉「ありがとう」とお礼を言い、別れの言葉「さようなら」と続けました。歌詞の中に友達の名前を入れる歌は世界的にも聞いたことがありませんが、独創性を発揮するためあえて入れました。たろうちゃんは日本の男の子の代表的な名前ですが、多言語になりますと各国の代表的な子供の名前、例えば米国ではBobあたりになります。Bobがたろうちゃんの代りに入ります。
子供の名前の入れ方に2つの方法があります。たろうちゃんを日本語、英語、その他の言語に共通して歌詞に入れる方法と各言語とも各国の代表的な子供の名前に変えることです。日本語の歌詞のところには、たろうちゃんを英語の歌詞にはBobなどと変えることです。たろうちゃんは相手がいる場合、自分の名前を呼んでもらうことになりますので各外国語の歌詞の中で自分の名前が呼ばれるほうが楽しく面白いと考え、歌詞では名前は共通にしました。
そして最後にママに「ママ、おやすみ」としました。
これらの歌詞が、楽しい歌になるのか、また子供たちが楽しく歌ってくれるのか不安でした。
- 日本語、英語、ロシア語を選んだ理由
おはよう、ママ あなたとわたし たのしいな 1、2、3 たろうちゃん ありがとう
さようなら ママ、おやすみ が基本の歌詞になりました。
多言語を生かすため、1番を日本語、2番を英語、3番をロシア語にしました。ロシア語にした理由は次の通りです。
はじめにフランス語か発音の容易なスペイン語にしようと思いましたが、子供に感動、挑戦、驚きなどを与えたいと思ってロシア語にしました。フランス語、スペイン語は文字が英語に似ていて歌詞の変化がありません。ロシア語はそれらに比べかなり文字の形が違いますので子供は戸惑いを感じます。しかし、子供は外国語を理屈ではなく感性で覚えますので余り抵抗なく受け入れてくれると期待しました。
日本人の子供には、日本語・英語・ロシア語の順序の歌を練習してもらい、アメリカ人の子供には、英語・日本語・ロシア語の順序の歌を練習してもらうと、歌詞の意味が共通ですのでメローディだけでお互いが理解しあえます。
日本語・韓国語・中国語のような組み合わせなど世界の各地の言語を組み合わせると膨大な数になりますが、3ないし5ヶ国語の組み合わせが適当と思います。
- インターネットで作曲を募集
歌詞ができましたので、次は歌詞に曲をつける必要があります。私は音楽的な才能がありませんので専門の作曲家に依頼しなければなりません。友達を通じて2人の作曲家に頼みましたが断られました。理由ははっきりと分かりませんが、私の歌詞にはいわゆる感動による心の動きや詩情というものがありません。このような場合には、作曲ができないのは当然と思われます。このような歌詞の作曲はコマーシャルソングのような歌を作る人でないと作曲できないと思いましたが、そのような人を探すつてがありません。いろいろな人に声を掛けて作曲してくれる人を探しましたが、なかなか見つかりませんでした。
私は、横浜国立大学で特別講義をしていましたので、数人の大学生にも作曲の依頼をしていましたら、たまたま工学部の大学院の生徒さんが興味を持ってくれてバンド仲間と作曲してくれました。明るくてテンポもいいのですが、何か満足がいきません。私はいろいろなジャンルの音楽を聞く耳がありましたので私の個人的な感じではどうも満足がいきません。困ったあげく世界に情報を発信できるインターネットで作曲を募集しようと考えました。
この子供の歌は、世界の子供に歌ってもらいたいと思っていましたので、国際的に受け入れられる優れた作曲を募集するため、募集のホームページは日本文と英文を作りました。
ホームページの基本的なデザインを考え、デザイン会社に制作を依頼しました。依頼した会社は若者たちが新しく設立した会社で経験の浅い会社です。この歌の作曲は難しそうであるのと応募が多いことを願って10万円の賞金をつけました。検索エンジンに登録して半年がたちましたが応募がまったくありません。10万円もの賞金がついているのですから、応募がないとは常識では考えられません。
その理由を調べて見ますと、インターネットで私のサイトを作曲家が見ていないことでした。子供の歌の作曲に応募したい人はキーワードとして「子供」「作曲募集」を検索エンジンに入力していますが、検索エンジンは評価の高いサイトから順番に1位、2位、3位などと表示します。「子供」と「作曲募集」で検索しますと検索エンジンGoogleでは約2万サイトありました。私のサイトははるかかなたにあり人の目にとまる順番にはありませんでした。人の目にとまるようにするには、どうしたらよいかが課題となりました。インターネット関連の本を読みますと「上位表示」「最適化」という言葉に出会いました。サイトが20位以内に表示されることを上位表示または最適化といいます。インターネットで検索する人は多くの人は20位ぐらいまでしか見ないとのことです。20位以内に表示されれば、すべての人がタイトルと説明文を見てくれます。
- ホームページの上位表示
国内にホームページの最適化技術を持った会社がありましたが、インターネットの技術はアメリカが進んでいましたし、また英文のサイトもありますので、英語でサイトを最適化する会社を探しました。最適化を英語でSearch Engine Optimization, SEO といいます。SEOと入力しますと膨大な数のサイトがありましたが、ほとんどの会社は企業を相手にする会社で、企業のSEOをする料金は数10万円から数100万円でとても依頼ができない金額でほぼあきらめていました。数10社のサイトを探していくと1社、個人を対象にする会社があり趣味のような非営利の場合は5万円で最適化するというものでした。ただし、上位表示の保証はしないという条件でした。
私としては、5万円に賭けてみようと思い、SEOを申込みました。まず単語の修正が行われました。これは非常に大事なことでした。
「作曲」の単語を日本人が書いた英語はcomposingでした。米国の会社は、これをsongwritingに修正しました。composingは、交響曲のような歌の作曲に使い、子供の歌のような作曲にはsongwritingを使うということでした。これが英訳の難しい点で、専門的な知識がないと正しい英訳ができない典型的な例です。子供の歌の英語圏の作曲家はsongwritingを入力しているのにcomposingの単語を使ってはまったく検索されません。日本人の英訳は、最後はネイテブの専門家に校正してもらう必要があります。
数回、米国から連絡があり、修正が行われました。ここで幸いしたのは、先方からの指示に従ってこちらで修正した部分は、SEOの技術内容に関することで私の勉強になったことです。
サイトの修正が終わり、英文のサイトの上位表示を追跡していきました。キーワードは
Children とsongwriting です。検索エンジンのGoogleによると、このキーワードで表示される総数は約14万サイトありましたが、私のサイトは最終的には1番目に検索されました。これには本当に驚きました。米国のSEO会社の実力に敬服しました。
日本語のサイトは、米国からの指示で学んだ技術に独習した最適化技術を加えて私が修正しました。このサイトも最終的には1番目に表示されました。
上位表示されましたので、締め切りまでの6カ月間に日本から10曲、米国から3曲の応募がありました。その中に和歌山の小学校の太田雅也先生の優れた作曲に出会うことができました。インターネットの威力をまざまざと感じました。
- ピアノ奏者と歌手を探す
作曲ができましたので、次にピアノ奏者と歌手を探さねばなりません。私は視覚障害者のボランティアをしていますが、そのグループの中に幸運にもピアノの先生がいましたので、ピアノはその先生にお願いすることにしました。
子供の歌ですから日本人、アメリカ人、ロシア人の3人の子供に歌ってもらうのが理想ですが、3人の歌える子供を探すのは簡単ではありませんし、また時間と費用がかなり掛かります。それで日本人の歌手でこの歌に適した声の人を探すことにしました。また幸運にもボランティアグループの中に女性歌手 竹内央子さんがいました。彼女に歌ってもらいますと、声と歌い方がこの曲にぴったりでした。彼女の英語の発音を鎌倉に住む米国人Rさんに聞いてもらいましたら発音は非常によいとのことでした。問題はロシア語です。横浜に住むロシア人の女性Gさんに指導してもらってどうにか合格しました。
- CDの制作
録音は、ピアノの伴奏と同時に歌手の歌を録音室で録音するのが理想ですが、録音室の使用料が高く、またピアノの先生と歌手の時間を合わせることが難しかったのでピアノの録音と歌の録音を分けることにしました。ピアノはノイズを少なくするためヤマハの電子楽器でMDに録音し、さらにパソコンに取り込み、ミキサーで歌手の歌をパソコンで合成しました。ところがプチノイズが数箇所入り各種の消去ソフトでノイズを除去しようとしましたがノイズを取ることができませんでした。プチノイズはパソコン、楽器、ミキシングなどのハードの特性が合わないとなかなかなくすことができないことが分かり、音質は低下しますがプチノイズがでないMDでミキシング録音することにしました。
歌手が先にヤマハの電子楽器で録音したピアノ曲をヘッドホーンで聞きながらマイクに歌い、マイクとピアノを同時にMDにミキシングして録音し、これをパソコンに取り込んでCDを制作しました。ノイズのない録音ができました。
- 小学校での実験
CDやテープができましたので、子供たちにこの歌がどのように受け入れられるか実験したいと思いました。実験の場としては小学校が最適ですが知り合いがありませんでしたが、山で偶然、鎌倉の小坂小学校の先生と知り合いになり、先生に「おはよう、ママ」のお話をして実験の場を頂きたいことをお願いしましたところ、先生が興味を持たれ検討して頂くことになりました。先生のご尽力で1時間頂くことができました。
生徒さんに歌詞を渡し、始めに私が発音を教え、その後歌手が録音したテープで5回練習しました。練習はすごく楽しく行われ私の不安は危惧に終わりました。ロシア語はなじみ難いと心配していましたが5回の練習を終える頃には、半数ぐらいの子供たちは歌詞を見ないで歌っていました。最後に歌詞「たろうちゃん」の代りに隣の席の友達の名前を互いに言いあって歌ったときは、すごく盛り上がり笑顔がいっぱいでした。大成功でした。
練習が終わって私が「有難うございました。ではさようなら」と言いましたら、数人の子が
大きな声で「だーすびだーにゃ」と早速ロシア語で挨拶してくれました。子供の反応の速さに感心させられました。
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